エッセイ・コラム
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「英語の話せるボスになる」 英語表現拾い読み

初出:『赴任者のマネジメント・マガジン』2003.10, PHP International

河谷隆司
マネジメントコンサルタント

2002年に『英語の話せるボスになる』(河谷隆司著・PHP International)を出版して幸い部数がかなり伸びている。ここでは河谷氏に、「マネジメント英語」の中でも、シニアクラス~トップの日本人管理者の参考に、最近収集した表現をリストアップしていただいた。本とあわせてお読みいただければ幸いである。(編集部)

1) 3拍子でインパクトを倍増する 

(日産のテネシー工場の開所式でゴーン社長。NHK03年6月放映)
“This plant is leading the symbol of the revival of Nissan ? to challenge oneself, to stretch our self, to deliver the best of our self.”
「この工場は日産リバイバルの象徴そのものです。己に挑戦し、さらに努力し、我々にできる最高のものを届けるのです」―― これくらいのブチ上げは日本人トップにもぜひともやって頂きたい。そんな柄じゃない? いや、その柄を海外では変えなければ人はついて来ない。見ていて周囲にわかるリーダーシップでなければ駄目である。ええかっこしいでは全くない。

3拍子が、後半にある。英語ではこのように3つ繰り返しの言い回しが多用されるし、この方が人の記憶に断然残る。

(日本の迎賓館でロンドンの日本文化祭を訪れた時の感動を語ったサッチャー首相。NHK放映。86年ごろ?)
“I went to see it. My staff went to see it. People of London went to see it. It was marvelous!” とこれも3拍子だった。未だに耳に音が残っているのだから。

(Mr.ビーンことRowan Atkinson演じるスパイ映画 Jonny English広告コピー)
これに噴き出した人は多いだろう。私の高校生の息子も笑いこけた名3拍子だ。
 “He Knows No Fear. He Knows No Danger. He Knows Nothing.”
「彼は恐れを知らない。危険を顧みない。だって何も知らないのだから!」 (^^) 

(インドネシア大学で異文化関係論を教えているDr. Iridと筆者の会話)
3拍子まで記憶が続かない?という読者には、2拍子でいってもらいたい。これでも効果は大きい。
“Leaders cannot be led. They must lead!”「リーダーは部下から導かれてはならないのです。人を導かなければなりません」
 教授とインドネシアでのリーダーシップについて語り合っていた時の発言だ。つまり上司は強いリーダーでなければ人がついてこない、という意味だが、2拍子が利いている。
もうひとつ2拍子を。 

(英国人のマネジメントコンサルタント)
“Not just you try to be supportive. You must be ‘seen’ supportive.”「人に支援的であろうとするだけではだめだ。周りにそのように見えなければ。」 

フレーズレベルでも、”put aside your differences and to forgive and forget” 「意見の違いは脇において、この際、水に流してはどうか」”forgive and forget” は決まり文句。これを、”Forgive, but not forget.” といえば「忘れよう、しかし、許すまい」となり、人間関係から戦争による体験など広く使われている。
 今度のスピーチや会議で、この「3拍子・2拍子」を意識してほしい。きっとインパクトが倍増するはずだ。

2) 危機に果敢に挑戦する態度を伝える 

(SARSの社会経済的影響と対応を振り返る中国Gao Qiang副保険大臣。マレーシアのSTAR紙)
“We lost a lot and learnt a lot from this human tragedy.”(この人間の悲劇でわが国は多くを失い、多くを学びました)これもたまたま2拍子になっている。これは危機感と共にポジティブな面も伝わっている。それはlearned a lotがあるからだ。日本人はどうしても危機感を煽る場合、良くない話だけをしてそれでピリオドを打つパターンが多い。ある社長は常々社員にこう言っているという。
「それでは利益が上がらない。それでは客の信用がなくなる。それではビジネスチャンスがなくなる」
これ自体は問題ないが、その理由と、だから、こうしよう、という前と後が必要だ。リーダーの発言は重いだけに、もしこの発言に前後がない場合、それで“ファイナル”(最後通告)となり聞いている方はやり場がなくなる。こういう危機意識の植え付け方は大体海外では失敗する。大前研一氏もTVでアメリカに視察に来た重役が「厳しい経済環境の中では、鉛筆一本に至るまで節約して乗り切って欲しい」と言ったとして、嘆いていた。
 では、以下、リーダーらしい言い方をみてみよう。 

(マレーシア副首相バダウィ氏の党総会開会スピーチ・New Straights Times紙)
“Do no think for a moment that Malay political power will last forever.”
「マレー人の政治的勢力が永遠に続くなどと思ってはだめだ」
Malay….に our company, this business, our credibility, customer trustなどと入れれば使えるだろう。
 この場合、日本人の危ないところは、”I don’t know how long our company will last. But let’s work hard so we can survive.”「まあ、いつまでわが社も続くかわかりませんが、生き残るためにも一生懸命働きましょう」と言い放ってしまうことだ。これが、大手メーカー社長のアニュアルディナー・スピーチだったので社員の士気は地に落ちた(英訳は筆者)。なんとかわいそうな。そして無責任な放言!そんなつもりじゃなかった、では許されない。アメリカなら”I will not forgive and forget!”「俺は今の発言を許さないし、忘れもしない」とマスコミに垂れ込まれること必至だ。これが表沙汰にならないのはアジアの寛容さ(tolerance)にぎりぎり救われているに過ぎない。
 
“If you treat people like a monkey, they will work like a monkey.”(シェル石油シンガポールのコンサルタント・対談記事参照)とはアジアでよく聞く表現だ。”If you give peanuts, they will work like a monkey.”と言い換える人もいる。勝手にたとえられる猿には迷惑な話だろうが、ピーナッツのような給料しか払わなければ、人は猿の仕事しかしないよ、という意味だ。くだんの社長に聞かせたい一言だ。

 では本当に会社が危なかったら、どういう言い方が適当なのだろうか?マネジメント英語の発揮どころだ。

“I don’t know how long our company will last.”はどう煮ても喰えないので、私ならこう変える。”Don’t think our business will last forever.”と our companyではダイレクトすぎるので、our business(我々のビジネス)に変える気配りは当然だ。そしてLet’s work hard.などという(この文脈では)無意味な言い方はやめ、”The survival of our company depends on your hard work! Let’s work together to ensure quick recovery of our business.”「当社の生き残りは皆さんのがんばりにかかっています。ですから、ビジネスがいち早く立ち直るように一緒にがんばりましょう」などと言い換えてはどうか。
同じcompanyの使い方でも主語をsurvivalにしてdepends on~で立ち直れる方法があるという意味を残し、それはみんなの hard work だよ、と言えば同じ逆境でも随分と前向きにとらえられるではないか。


さらに、少しでも明るい事実を探してきて、“We already see signs of resilience in our market.”「既に市場には回復の兆しが見え始めている…」などと続ければ、社員は方向性を感じることができる。これが幹部がマネジメント英語で示すべきビジョンというものだ。繰り返すが、ボキャブラリーは関係ない。長期にわたって人生設計を託している現地社員への気配りと、現地経営への真剣さが、人の言葉をどのようにも変える。


“Treat people well, then they follow you….if the leader is GOOD!!”
「社員を大事に扱ってください。そうすれば彼らは皆さんについてきます。上司としての皆さんが“できた人”であればですが」(経営顧問ズルキフリ・マレック氏 / モチベーションセミナーでの発言・マレーシア)
読者のご健闘と、現地社員の幸福を祈りたい。

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